キャラクター&開発コンセプト
9代目カムリ(国内向け)は全車ハイブリッドに
2011年9月5日に発売された新型カムリは、1980年に登場したFRの「セリカ カムリ」を初代とすれば9代目、1982年に登場したFFの「カムリ」から数えれば8代目に当たる。今回の新型は国内向けが全車ハイブリッドとなったのが大きな特徴だ。先代の場合、海外では純ガソリン車と併せてハイブリッド車も販売されていたが、日本では純ガソリン車のみだったので、今回はそれとは逆のパターンとなる。
FFミドルクラスセダンの国内市場は縮小傾向にあり、5年前に登場した先代ですら販売目標は月間1000台に過ぎなかったが、新型にいたっては月間500台に半減。世界市場に占める割合は1%にも満たない。たたし国内では今年で創立50周年を迎えたトヨタカローラ店の旗艦セダンとなるほか、同店の専売モデルとなる。
従来カムリの生産拠点は、米国、オーストラリア、タイ、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナム、中国、ロシアと世界中にあるが、国内向け新型の生産拠点は先代と同じトヨタ本社の堤工場になる。
カムリのミニヒストリー
「カムリ」がトヨタ初のエンジン横置きFF車となって登場したのは1982年で(それまでは縦置きのターセル/コルサがトヨタで唯一のFF車)、世界的に見ればこれが初代カムリだ。これが1980年代から世界戦略車として世界中に輸出され、やがてトヨタの代表車種に発展。米国では9年連続(2002~2010年)で乗用車のベストセラーとなるなど、トヨタの最量販モデルとして大きな成功を収めた。1982年以降の累計販売台数は約1450万台で、世界経済が揺れ動いた過去5年間でも年間平均80万台ペースで生産されている。
一方、国内市場では国内向けの5ナンバーカムリが1998年に終了。代わって北米向けカムリがセプター、カムリ グラシアといった車名で投入された後、10年ほど前からカムリの名に戻っていた。日本でカムリと言えば5ナンバーの中型セダンというイメージがあるのは、1990年代に国内向けと海外向けで違うモデルだったからだ。
関連リンク
■米国トヨタ公式HP>カムリ(英語)
過去のトヨタ カムリ新車試乗記
■トヨタ カムリ G ディグニス エディション (2006年3月更新)
■トヨタ カムリ 2.4G (2001年10月更新)
価格帯&グレード展開
ハイブリッドセダン最安の304万~380万円。売れ筋は317万円
全車FFのハイブリッドで、グレードは16インチのスチールホイール仕様となる標準グレード(304万円)、17インチアルミホイール、革巻きステアリング、運転席電動シート等が付く「Gパッケージ」(317万円)、レザーシートやHDDナビ+地デジ(33万円相当)等を備える「レザーパッケージ」(380万円)の3種類。売れ筋は317万円のGパッケージで、今回試乗したのもそれだ。ナビやオーディオは、最上級モデルを除いてオプションになる。
なお、同じトヨタのハイブリッドセダンであるSAIは338万~426万円で、つまりSAIよりボディサイズが二回りほど大きいカムリハイブリッドの方が安く、4ドアセダンのハイブリッド車としては現時点で国内最安になる。ただしSAIにはリモートタッチ付のHDDナビや地デジ、アルミホイールが全車標準になるので、それがない分だけ安いのも確か。
■カムリ ハイブリッド(標準グレード) 304万円
■カムリ ハイブリッド “G パッケージ” 317万円 ※今回の試乗車
■カムリ ハイブリッド “レザーパッケージ” 380万円
パッケージング&スタイル
デザインは米国向けとほぼ同じ
見た目は割と中庸だった歴代カムリだが、「エモーショナル」を重視したという新型は、エッジのはっきりしたデザインに軌道修正。フロントバンパーは現行プリウスや次期レクサスGSのような立体的な形状だし、全体に前のめりに見えるところも隠し味。マークXにも負けないスポーティな雰囲気は、今までのカムリに無かったものだ。一方、好き嫌いを問わない無難なまとめ方は相変わらずトヨタ的で、Cピラーの形状はクラウンに似ていたりもする。
空力デザインもプリウスほど目立たないが、そこかしこに採用。床下のフラット化は当然として、面白いのはボルテックスジェネレーター(渦発生装置)と呼ばれるF1譲りの処理。ドアミラーの付け根に「エアロスタビライジングフィン」と呼ばれる小さな突起があり、これによってボディ側面に渦が発生→流速が向上→左右から抑え込む力が発生→安定性が向上する、らしい。「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな話だが、非装着車と比べると違いが体感できるとのこと。Cd値は0.28だ。
ボディサイズはクラウン並み
ボディサイズはデカイと言えばデカイが、現行クラウンや日産ティアナと大差なし。最小回転半径はFRであるマークXやクラウンの5.2メートルに及ばない5.5メートルだが、小回りもそう苦にならない。バックモニターは欲しいところだが、日本でも便利に乗り回せるサイズだ。
| 全長(mm) | 全幅(mm) | 全高(mm) | ホイールベース(mm) | 最小回転半径(m) | |
| ■トヨタ SAI | 4605~4615 | 1770 | 1495 | 2700 | 5.2~5.6 |
| ■トヨタ マーク X | 4730 | 1795 | 1435 | 2850 | 5.2 |
| ■トヨタ カムリ ハイブリッド | 4825 | 1825 | 1470 | 2775 | 5.5 |
| ■日産 ティアナ | 4850 | 1795 | 1475 | 2775 | 5.3~5.7 |
| ■トヨタ クラウン ※1 | 4870 | 1795 | 1470 | 2850 | 5.2 |
※1:クラウンはアスリート/ロイヤルサルーン/ハイブリッドの数値(4WD車やマジェスタを除く)
インテリア&ラゲッジスペース
ハイブリッド車らしさを一掃
国内向け専用のインパネは見事に和風であり、見慣れたトヨタ風。黒基調の樹脂と水平基調のデザインは、これ以上ないほど手堅い雰囲気を漂わせる。
また何分にもプリウスやSAIのような先進性は積極的に打ち出さない、という方針のクルマなので、シフトレバーは一昔前のトヨタ車で定番だったジグザグゲート式となるなど「ハイブリッド車らしさ」を消し去ったところも画期的。ここだけ見たら20世紀のクルマだ。
またHDDナビはオプションなので、SAIやレクサス HS250hなどにあるリモートタッチはなく、純正HDDナビはタッチパネルで操作することになる。そもそも販売主力グレードはオーディオ「レス」だ。余計な機能は要らない、安い方がいい、AMラジオとカセットが聞ければいい、というユーザーにも対応するもので、これも新型カムリの特徴になる。
要するに中身はハイブリッドだが、各種操作はガソリン車のまま。一見、時代に逆行しているようだが、考えようによっては「見た目はレトロ、中身は最先端」というもの。空調などの各種スイッチもシンプルで分かりやすく、中高年に優しい。
新しい工夫はあるが、コンサバに過ぎる
ただ、よく観察してみると、単にレトロなだけではない。例えばウッド調パネルに見えるのは、カーボン調パネルにブラウン系のクリア塗装を施したもので、「サイバーカーボン調パネル」と呼ばれる。またメーターカバーやダッシュボードにはレザー調のソフトパッドを張り、ステッチ(縫い目)をミシンで入れている。このクラスで本物のステッチを使うのは珍しい。
ただ、率直に言えば、サイバーカーボン調パネルは色調や造形が地味すぎて、せっかくの素材感が生きていないし、レザー調ソフトパッドは見た目がいかにも単調。インパネ全体のデザインもややコンサバに過ぎる。レトロではなく、古くさいイメージになってしまったのは残念。
後席スペースは問題なし。座り心地は保留
トヨタの国内向けFFセダンでは最大クラスということで(米国にはこの上にトヨタブランドで最大セダンのアヴァロンがある)、後席スペースはまったく問題ない。クラウンやマジェスタに全く引け目を感じないレベルだ。ただ、予想に反して座面クッションは少々薄めに感じられた。座り心地については長時間乗らないと判定を下せないが、これまでのトヨタ製アッパーセダンのものとは作りが違う感じ。
荷室容量はハイブリッドセダン最大級。トランクスルーも初採用
荷室容量は440リッターとトヨタのハイブリッドセダンで最大級を確保。SAIでもゴルフバッグを4個収納できるとあったので、新型カムリハイブリッドでももちろん可能。ボディ後部に駆動用ニッケル水素バッテリーがあることを考えると、これは大したもの。
ちなみにFFベースのトヨタ SAI/レクサス HS250hは415リッター、FRベースのクラウンハイブリッドは376リッターに留まる。また純ガソリン車のマークXでも先代は437リッターだった(現行型は480リッター)。